『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

三島由紀夫とジャン・コクトー

仮面の告白 (新潮文庫)

仮面の告白 (新潮文庫)

映画「春の雪」に合わせて新しい帯がつけられて売られてた文庫。なんか、帯の惹句は内容とずれていた気が……。帯はすぐ捨てる派なので、細かいことは覚えていませんが。
私小説的な雰囲気を漂わせている小説なのですが、なんとなく主人公の魅かれるものがなんとなくタルホ的ですね。戦死とかに魅かれるというような話は足穂も何かに書いていたはず。
三島由紀夫ジャン・コクトーに似たところがあるように感じていたのですが、結構対照的な部分が多かったことに今回気づきました。
例えば、「仮面の告白」「金閣寺」などは主観から描かれていますが、「山師トマ」「恐るべき子供たち」は客観から描かれています。両者とも明晰さのある描写ですが、コクトーの場合は彼が描くデッサンのような簡潔さがあります。これに比べて三島は濃い明暗のある油絵のようなイメージ。
本人たちの言葉を借りるなら、コクトーは「かなり鋭敏に、素早く、一跨ぎで、滑稽と悲痛を横切ること、これが僕のやりたいと思うことだ」で、三島は「こんな大袈裟な言い方は私の持ち前だから」と言ったところ。
足穂の場合は、三島よりもむしろコクトーに近いような気が。といっても、まだ読んでない本がたくさんあるので何とも云えませんが。