書籍ベストテン……?
ベストテン、纏めるのがなんだか面倒くさくなって参りました。決して某所の真似だったり影響ではありませんw
とりあえず、短くコメントを付記することで誤魔化しておきます。
・「山尾悠子作品集成」
最高だった。圧倒的な文章力。
・澁澤龍彦「高丘親王航海記」
この奇妙なまでの明るさはいったいどこから来るのだろうか。当時作者は咽頭癌で入院し、手術まで受けている。そんな当時の状況を感じさせない文章。
そういえば、中井英夫が「三島も澁澤もいないこの世なんて」と嘆いたと「幻想文学」の中井英夫追悼号に載ってたなぁ。
・古川日出男「アラビアの夜の種族」
東雅夫氏に澁澤を読んだことがあるかと問われ、アラビア旅行のは読んだかもしれないと答えていた古川氏。
それが作者の韜晦なのか本当なのかはさておき、澁澤龍彦好きにはお奨めの小説。ヒジュラ歴1213年、カイロに迫るナポレオン艦隊。そして彼を暗殺するために読むものを狂気に陥れる一冊の本が用意されようとしている……。
ナポレオン艦隊が迫るカイロと(千夜一夜物語のように)語り部に語られる物語で構成されているのですが、作者の語り口が抜群に巧いです。昨日読み終えた「ベルカ、吠えないのか?」でその巧さを再確認。
bk1に作者のインタビュー記事が載ってました。参考に。
・笙野頼子「母の発達」
「どういう小説なの?」
「爆笑お母さんホラー。」
という会話を友人とした小説。どんな小説なのか、と聞かれても簡単に答えられないです。母から娘への抑圧を描いた小説、ということもできますが……。Amazonの本の紹介だと、「娘に殺されたはずの母が人肉をむさぼりくって「発達」を始め、母の体から無数の「母虫」が増殖していく。母と娘の間の愛憎のねじれと切なさを描く、史上無敵の爆笑おかあさんホラー。」になってますが、これもなんだかうまい説明になっていない気がします。
文章としては町田康や舞城王太郎 に似て、人を引っ張り込む奇妙なノリがあるタイプ。次々と繰り出される言葉遊びが爆笑を誘います。「あ」から「ん」までに増殖するおかあさんが楽しい。
……説明不能なので、読んでください。
・佐藤亜紀「バルタザールの遍歴」
第三回ファンタジーノベル大賞受賞作。ちなみにこの時の候補作の中に、恩田陸「六番目の小夜子」が入ってます。ファンタジーノベル大賞については、こちら
を参考に。
「国際舞台にも通用する完璧な小説」と選考委員だった荒俣氏に云わせた作品。一つの肉体に二人の精神を共有する双子「バルタザール」と「メルヒオール」の放蕩と没落の物語、と云ったところ。良くできたストーリー構成と簡潔な語り口、完璧な時代考証。極上の翻訳小説のごとし。
・宇月原晴明「信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」
時代小説の極北にして、伝奇小説の王道と云ったところ。
1930年、ベルリンでアントナン・アルトーが男性とも女性とも思える美しい青年「総見寺龍彦」と出会うところから始まるこの小説。アルトーが登場することから分かる方もいると思いますが、ローマ皇帝ヘリオガバルスと織田信長という組み合わせからしてすでに、作者が澁澤龍彦を読んでいる方だなぁ……ということが分かります。登場人物も、「総見寺龍彦」ですしw
たぶん、時代小説好きの方には次々と正史ではない(ムー的な)知識が出てきて翻弄されると思われます。その点が時代小説としては極北。しかし伝奇物としてはかなり上質なのではないでしょうか。
というか、この小説もファンタジーノベル大賞受賞作なのですが、この文学賞に関してはまだハズレがないですね……。これからも注目。
・光瀬龍「百億の昼と千億の夜」
正直SFとして読むと、ちょっと古さを感じてしまいます。しかし、この無常観とでもいいたいもの……これは他にないです。終末を取り扱う類として絶品。
萩尾望都がこの作品を元に漫画を描いてるみたいです。まだ未読なのですが、そちらもそのうち。
・アンドレ・ブルトン「ナジャ」
なにか色々書こうかと思ったら、松岡正剛の千夜千冊にも載っている書評が凄く良いのでそちらをご覧ください。ちなみに私が読んだのは翻訳者が違いますが。
美は痙攣的なものだろう、それ以外にはないだろう。 by アンドレ・ブルトン
……なんだか途中から短いコメントではなくなってしまったような……w
来年は蔵書リストを作る、カステロフィリアになる(?)、が目標です。ではでは、また来年。
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