『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

澁澤龍彦、最後の文業

澁澤龍彦巌谷國士「裸婦の中の裸婦」読了。澁澤龍彦には珍しく、共著という形で出版された本。
咽頭ガンで澁澤龍彦が入院した時点から、巌谷國士が引き継いでいる模様。
内容は二人の人物が一つの美術品について対話する画文集。バルテュスクラナッハ、ベラスケス、ヘルムート・ニュートンデルヴォー、眠るヘルマフロディトなど、登場する作品は多彩。
明晰な語り口とその視点の自由度が生かされ、澁澤龍彦の美術評論もののなかではかなり分かり易い内容となっていて、入門向きとしてみたい気持ちもありますが、対話集という形式ゆえにむしろ読み慣れたひと*1向けかと。
病床の澁澤龍彦が発声できないためにメモを書いたメモを読んだことがあるのですが、ちょうどそれに書かれていた文章を読む感じ。故に、入門としては少々浅すぎる感がします。


せっかくだから、澁澤龍彦がモデルになっている小説の登場人物リスト。

三島由紀夫暁の寺』の、「性の千年王国」を夢見るドイツ文学者・今西康は澁澤をモデルにしている
高橋たか子『誘惑者』の、悪魔学の権威・松澤龍介も澁澤をモデルにしている
篠田真由美『龍の黙示録』シリーズの主人公、鎌倉在住の著述家にして不老不死の吸血鬼である龍緋比古は、篠田によれば「ビジュアルイメージは若い頃の澁澤龍彦です、ただしサングラスつきで」とのことで、澁澤がモデルである
From 澁澤龍彦 - Wikipedia


ここに殊能将之の「鏡の中は日曜日」も入れたいなぁ。

裸婦の中の裸婦 (文春文庫)

裸婦の中の裸婦 (文春文庫)

*1:というかマニア