『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

アゴタ・クリストフ『悪童日記』

以前に図書館で借りて読んだ本ですが、購入&再読。
原題の『Le Grand Cahier』。直訳すると「大きなノートブック」という意味になり、作中で主人公の双子「ぼくら」が屋根裏に隠しているノートを指すようです。
内容も、「ぼくら」が互いに課題を出して書いた作文や彼らの日記に当たる形になってます。「万引き」や「学校」などの各章のタイトルは、例の作文の課題だったりするのでしょう、おそらく。
とても簡潔というか、即物的な印象のある文体はかなり魅力的です。作中の「ぼくら」の意見に、この文体を簡潔に説明している言葉があるので、引用しておきます。

感情を定義する言葉は非情に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうがよい。
アゴタ・クリストフ悪童日記』P.43

短いエピソードの連なりという構成は、各話ごとに暗転して次のエピソードが始まる舞台のような印象があって、戯曲っぽくもあります。

「ぼくら」の倫理的でないけれど、人間的な倫理観がこちらのいろんなとこをえぐりますね。今月は当たりの小説が多いみたいです。
あの倫理観は西尾維新クビシメロマンティスト』の感じに似ている気が。読み返して確かめよう……と思ったら、友人に先日譲ったんだったorz

主人公の「ぼくら」は精神的シャム双生児みたいなところがあって、最後に二人が別れるシーン以外は、「ぼくら」の倫理観は完成されてる感じがするなぁ。……
ちなみに、ゲーム『MOTHER 3』の主人公の名前が、この作品の双子と同じらしいです。『悪童日記』には名前が出てきませんが、続編では名前がわかるらしい。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)