『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

G.ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』

構成の巧みさについては、確かに作者自身の最高傑作であるという評価に同意するところなのですが、故郷への郷愁みたいなものがよく理解できないため、若干個人的評価は低め。
この作品の主要な登場人物であるサンティアゴ・ナサール(被害者)、アンヘラ・ビカリオの対照的な運命がかなり印象に残りました。この作品で扱われている事件を、旧い時代と新しい時代の境目に起こった象徴的出来事と見れば、被害者サンティアゴ・ナサールは旧時代の終焉のための供犠、アンヘラ・ビカリオは旧時代からの解放者というように見えます。
後書きを読んで自分も気付いたのですが、基本的にガルシア・マルケスカーニヴァルや冠婚葬祭などのイベントがよく登場する話を書いているように思われます。『百年の孤独』に至ってはブエンディア一族、そして舞台であるマコンド村の百年間にわたる冠婚葬祭そのものだと思いますし。
しかし、この小説を読むと後にG.ガルシア・マルケスが映画の方向に進むのも納得がいく気が。この作品自体、のちに何度か映画の原作になっていたりしますし。映画監督のウォン・カーウァイは、この作品やマヌエル・プイグ から強い影響を受けたとか。

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)