『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

9.11@ラテンアメリカ、またはイザベル・アジェンデ『精霊たちの家』読了

19世紀末からチリ・クーデターまでを舞台にしたある一族の年代史であり、またジャーナリスティックな視点を持った自伝的作品でもあり。
百年近い間に起こった出来事を扱うマジック・リアリズム系の小説と云う事で、すぐにガルシア・マルケスの『百年の孤独』を連想しますが、近いようでいて全く別物の作品。
ガルシア・マルケスの作品には、自らのジャーナリスト的視点に端を発するもの、幼い頃に祖母に聞かされたという説話の影響が感じられる幻想小説の二種類があり、そのどちらにも郷愁の要素が加わっているのが特徴だと思いますが、イザベル・アジェンデの『精霊たちの家』は丁度その両者の間を行く作品ではないかと。イザベル・アジェンデもまたジャーナリストの経験があり、またこの作品はチリからベネズエラに亡命した後に書かれたとの事。
あまりにも内容が濃密なため、ストーリーの要約は不可能と見たので、内容を簡潔に説明している帯の惹句を拝借。

「激しく時が流れても、そこには精霊のような愛があった。

よく見たら裏表紙のストーリー紹介も、紹介になってませんし。
最近読んだ本の中では、アゴタ・クリストフ悪童日記』と並ぶくらいの傑作ではないかと。ボルヘスガルシア・マルケスに比べて読みやすいので、マジック・リアリズム作品入門としてもお薦めです。

・関連リンク
チリ - Wikipedia
チリ・クーデター - Wikipedia
サルバドール・アジェンデ - Wikipedia
アウグスト・ピノチェト - Wikipedia
パブロ・ネルーダ - Wikipedia
ディプロ2003-9 - Soir d'euphorie, matin de desespoir
登場人物のモデルや歴史背景など。ちなみに、アジェンデ大統領はイザベル・アジェンデの叔父にあたる人だそうです。

精霊たちの家

精霊たちの家