『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

パトリック・ジュースキント『香水』


粗筋などは↑を参照のこと。というか、こちらを読んだら以下の文章が不要な気もするw
かなり面白く読めました。「鼻」というか、嗅覚に基づく表現がこれだけ幅を利かせた小説というのも珍しいのではないかと。
五感には大抵その感覚独自の文章表現があって、例えば触覚で云えば「ざらざら」、味覚で云えば「甘い」などがあります。
しかし、嗅覚にはそれがありません。嗅覚を文章上で表現しようとすると、比喩あるいは快・不快を表す以外表現方法がないように思います。
天性の嗅覚を持つが、価値観の全てが匂いのみに基づいている主人公グルヌイユ。彼の嗅覚が感じ取るところをどのように表現するか……。その辺が個人的に気になっていたのですが、作者が作中でちらりと漏らしているように、難しいようですね。
パトリック・ジュースキントは作中に溢れる匂いの数々を、数々の香料、匂いを放つ品々、グルヌイユの嗅覚にしか嗅ぎ取れない僅かな匂いなどの描写の積み重ねで表現しています。この方法は作中でかなり効果を上げていて、グルヌイユの感じる匂いの世界を確かに感じさせる物になっています。
確か井上夢人の『オルファクトグラム』が、匂いを共感覚的な描写で取り扱っているとか。ちょっとそちらも気になります。

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

共感覚関連
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20020325306.html
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050309301.html