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『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

ヴィリエ・ド・リラダン『リラダン全集1』

誕生日に5冊揃いで買ったうちの一巻目。相応の値段はしたけど、いま現在リラダンをまとめて読むにはこの本しかない。
収録作品は『残酷物語』『新残酷物語』『トリビュラ・ボノメ』。
『残酷物語』は既読だったので、『新残酷物語』から読み始めましたが、こちらはちょっといまいち。
『トリビュラ・ボノメ』はトリビュラ・ボノメ博士を主人公としたものをまとめたもの。収録作のなかで『白鳥殺害者』は『黒いユーモア選集』にて既読。


リラダンは毒舌の人だと思う。たとえば、下記のような言葉。

ああ! 一體いつになつたら眞實を語る文學者が現われるのか!――實際に起ることを!――誰も彼もがそらで知つていることを!――過去現在未來を通じて永久に街頭で行はれるようなことを! 之を要するに、真面目なことを! かかる文學者にして始めて「大衆」に尊敬される価値がある、蓋しそれこそ「天下萬民の筆」だからである。

もちろんリラダンはこんなことを全く考えていないだろう。彼の作品そのものが、上記文學に反する代物ばかりなのだから。
『トリビュラ・ボノメ』における主人公ボノメ博士は、リラダンにとっては唾棄すべきような人物の滑稽な戯画なのだ。ある意味では、『未來のイヴ』に登場するミス・アリシヤ・クラリーの男性版みたいなものだ。
この全集には、リラダンがボノメを主人公としたエピソードとして、彼の友人などに語ったものが「逸話及び警句集」として収録されている。こちらはとても短いけれど、そのぶん分かりやすい。

 ボノメはとある橋のそばの、盲目(めくら)乞食の犬の碗に、二錢(スー)入れてやるふりをしながら、實際には、碗の金を全部掻拂って、かう言ふ、
「さあ上げるよ、おやぢさん、だから吾輩のために祈つておくれよな!……」――「有難うございます、お返しは神さまがして下さいますやう!」