ジョルジュ・ペレック『給料をあげてもらうために上司に近づく技術と方法』
リラックスしてください!
―ジョルジュ・ペレック『給料をあげてもらうために上司に近づく技術と方法』
『給料をあげてもらうために上司に近づく技術と方法』という実用書めいた本を書いたのはフランス語の再頻出母音Eを含まない小説『煙滅』などの作者ジョルジュ・ペレック。作者は「あなた」に次々と「給料をあげてもらうために上司に近づく技術と方法」についてアドバイスをしてくるが、その困難と情熱の道筋は巻頭ですでに予告されている。
フローチャートで。
文章は句読点抜き改行なし。ちょうど 筒井康隆が怒涛の勢いで使ってくるような感じの文章だが、その内容はといえばクヨクヨウロウロと部署から部署、曜日から曜日、上司の在不在、受付嬢のご機嫌、はたまた食堂のメニューの狭間を給料のためにさまよい歩く「あなた」の物語になっている。
実用書めいた本書の呼びかけと、途切れることなくフローチャートを辿っていく文章がだんだんツボにハマって来て、ペレックの小説のなかでもかなり好きな部類という感じ。ストーリーの楽しみというよりは、テキストの楽しみという感じがある。
あとがき中にある著作計画に関する手紙のなかに、
クノーが『あなたまかせのお話』でなしたのとまさに正反対のことをしながら、私はあるフローチャートを線的に展開させました。
という部分があったので、次はウリポとこのつながりで『あなたまかせのお話』も読んでみたくなった。