『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

『20世紀SF 6 1990年代 遺伝子戦争』

個人的にはちょっと物足りないなぁ。
ウィリアム・ブラウニング・スペンサー『真夜中をダウンロード』なんかは仮想現実やネット、人工知能などのガジェットが出てくるんだけど、なんか古くさく感じてしまう。
10年くらい前に読んでいれば、また評価が違うのかもしれないけど……。
気に入ったのは、イーガン『しあわせの理由』、イアン・マクドナルドキリマンジャロへ』。
『しあわせの理由』は同名短篇集で既読なんですが、全体が頭に入ってたので以前に読んだときより余裕を持って読めた。
イーガンはまだ短篇集しか読んでいないけど、この作品が一番読みやすい気がする。
キリマンジャロへ』は、バラードの『結晶世界』っぽいな……と思ったら、解説にも、"『結晶世界』の本歌取りであると同時に、作者が一貫して取り組んでいるナノテク・テーマの作品でもある"と書いてた。
個人的には、地球外からやってきた"炭水化物疑似重合体の長い鎖*1"はラブクラフト『異次元の色彩』、最後に登場するアレはクトゥルフ系のモンスターを連想させる。


このシリーズ、人によっては本編より面白いと思われるのが、各単行本のあとがき。
SDI構想とSF作家とか、作品・作家とその時代背景に関する部分は結構面白い。
また、6巻末尾の「20世紀SF年表」も面白い。1941〜1999年の間に発行されたSF小説の名前が挙げられてるんですが、知っているのから知らないのまで、色々充実。

*1:≒プラスチックのような生命。周囲の環境を侵食して、自分たちの物にする。