円城塔『シャッフル航法』
強引でもいい。
逞しく育ってほしい。
― 「Beaver Weaver」
円城塔の書く話はわりと好きで、ここ最近めっきり本を読まなくなったなかでも思い出したように読んでいる。
今回の『シャッフル航法』のなかでは個人的にカート・ヴォネガットのトラルファマドール星人ものやダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイクガイド』あたりを連想させる「イグノラムス・イグノラビムス」が好みだった。
多分この宇宙では「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」は750万年後に42だと明らかになり、宇宙船の新型燃料を実験しているときに宇宙は消し飛んでしまうことが予め知られていたりするだろう。
他には表題作の「シャッフル航法」や「Φ」がウリポ的な感じでいまの好みにあっていた。とくに「Φ」の感じはジョルジュ・ペレック『煙滅』冒頭の祈りの場面を連想した。
あと「Beaver Weaver」はある種のサイキックバトルか何かのように読めてきて、うっかり上遠野浩平のナイトウォッチ三部作やら山田正紀の『チョウたちの時間』などの徳間デュアル文庫で昔出ていた本を本棚から発掘したくなったりした。
円城塔はプログラミング的な話が入ってくるあたりで少しイーガンを連想したりするのだけど、むしろイーガンのような生真面目な重さみたいなのよりは、澁澤龍彦の『高丘親王航海記』みたいな軽さがあって、そこが好ましい感じだなという気がする。*1