『書物の迷宮』予告篇

思い出したように本を読み、本の読み方を思い出す

ジャン・ジュネ『ブレストの乱暴者』

以前読んだ同作者の『泥棒日記』と比較して、断然こちらの方が面白い。
この辺は主に訳者の調子が作品によく合っているかだろうという感じ。翻訳者は澁澤龍彦で、彼の翻訳作品のなかでも特に面白い部類に含まれる予感。
霧に包まれた街、水兵、強盗、殺人、見分け難い兄弟の愛、男色……。
物語の配色はやはりジュネのそれ。ジュネ独特の表現、文体の面白いところは、男色やら犯罪やら、自称古典的良識派が眉を潜めそうな題材を詩に変換してしまうところ(?)。
こういう書き方ができる作家を、いまのところジュネ以外に知らないなぁ。

ブレストの乱暴者 (河出文庫)

ブレストの乱暴者 (河出文庫)